
就職活動では、さまざまな場面で長所と自己PRを求められます。面接の最初で自己PRを求められたり、作成している提出書類で長所を記入する項目があったりするでしょう。
このような場面に遭遇して、「長所と自己PRは何が違うのかわからない」「異なる内容を書いたつもりだけれどあっているかどうか不安」といった疑問・悩みを抱えている人は少なくありません。
本記事では、長所と自己PRの違いを中心に解説します。長所および自己PRの作り方・注意点なども含めて網羅的に紹介するので、ぜひ参考にしてください。
長所と自己PRは違う?
長所と自己PRは、何がどんな風に違うのでしょう。このような疑問を抱いている人は少なくありません。
この2種類を聞かれる理由とあわせて確認していきましょう。
なぜ長所と自己PRを聞かれるのか
就職活動において、多くの企業で長所・自己PRを聞く主な理由は以下の通りです。
- 求める人材とのマッチング度
- 採用後の業務との適性
- 採用後に得られるであろう企業側のメリット
- 企業分析ができているかどうか
- 自己分析ができているかどうか
企業は、入社後のことをある程度想定して採用試験を行っています。そのため求める人材像や業務との適性と乖離している人は、採用したがりません。よって上記の理由のなかでも1と2は、特に重要な注目ポイントです。

長所とは
長所とは、簡単に説明すると「自分自身の人となり」です。具体的には、以下のようなものが当てはまります。
- 性格
- 考え方
- 能力
- 特技
- 他者よりも優れている点
長所を伝える際の例文は、以下の通りです。
「継続力」と「粘り強さ」のように、同じ内容を表す言葉を言い換えて盛り込むことで性格と能力の2側面から長所を伝えることが可能です。
自己PRとは
自己PRは長所と混同されがちですが、目的と使われ方が大きく異なります。
自己PRとは、簡単に表現すると「自分の強みをアピールして売り込むこと」です。採用担当者にプラスのイメージを抱いてもらいやすいものを取り上げて伝える点は、長所と似ています。しかし「アピール」「売り込む」という要素が加わる点は、前述した長所と異なる点です。
長所で取り上げた例文をもとに、自己PRとしての表現に変えてみましょう。

長所の作り方
長所の作り方を紹介するので、参考にしてください。
自分の長所は何かを考える
最初に自分の長所について知らなければなりません。長所を見つける具体的な方法として、以下のようなものがあります。
方法 | メリットなど |
家族・知人に聞いてみる | ・自分には見えていなかった長所が見つかりやすい ・自分は長所だと認識していた点がそうではない可能性がある |
現在や過去の行動から分析 | ・困難な状況に陥った経験にフォーカスする ・何を考えてどのような行動をしたのかを思い出す ・その時の行動や思考から長所や短所が見えてくる |
短所から考える | ・短所は裏を返すと長所になりうる ・長所と短所に一貫性を持たせる |
上記のなかで難しさや意外性を感じるのは「短所から考える」方法かもしれません。短所は見方を変えると長所になります。しかし、いきなり見方を変えるといわれてもできない人もいるでしょう。
短所 | 長所 |
心配性 | 危機管理能力が高い |
優柔不断 | 多角的な分析能力がある |
完璧主義 | ・質の高さへのこだわり ・プロ意識が高い |
人見知り | 傾聴力、相手への配慮 |
飽きっぽい | 好奇心旺盛 |
短所を長所に言い換える一例を一覧表にしました。上記のように短所は長所への言い換えが可能なので、一覧表を参考にして試してみてください。

企業の求める人物像とかけ離れない
企業の求める人物像とかけ離れないことも、長所を作る際の重要なポイントです。
企業は具体的な理想・希望を想定した人物像を採用したいと考えて、採用試験を行っています。そのため、求める人物像とかけ離れてしまうと採用される確率は下がってしまうでしょう。
採用試験でどのような人材が求められるかは、業界・職種・企業によって異なります。長所は応募する企業などによって変えなければならず、そのためには事前の企業研究が欠かせません。
例えば、企業が継続力・粘り強さのある人材を求めていたとしましょう。その際の長所の良い例文・悪い例文は以下の通りです。
例文タイプ | 例文 |
良い | 私の長所は、継続力と粘り強さです。 |
悪い | 私の長所は、好奇心旺盛なところです。 |
一見、どちらも長所としては悪くありません。好奇心旺盛という特徴も、長所として受け取ってもらいやすい性格です。
このように企業が求める人材とかけ離れた点を長所として取り上げると、短所として受け取られかねません。企業研究を行ったうえで、マッチした長所を取り上げましょう。
具体的なエピソードを加える
具体的なエピソードを盛り込むことも、長所を作成するうえでの重要ポイントです。
採用担当者は初めて出会う人であり、応募者のことを何も知りません。理解してもらうためには、相手が想像しやすいようなエピソードを加える必要があります。
エピソードが含まれていない例文と、含まれている例文で比較してみましょう。
エピソードの有無 | 例文 |
あり | 私の長所は継続力と粘り強さです。 学生時代、プログラミング学習に未経験の状態から独学で取り組みました。繰り返し遭遇したエラーにも諦めずに試行錯誤を重ね、自力でアプリケーション開発ができるまでになりました。 私は、持ち前の継続力と粘り強さで、貴社の業務において必要となる新たな知識・技術を積極的に習得し、成長し続けるプログラマーとして貢献したいと考えております。 |
なし | 私の長所は継続力と粘り強さです。 持ち前の継続力と粘り強さで、貴社の業務において必要となる新たな知識・技術を積極的に習得し、成長し続けるプログラマーとして貢献したいと考えております。 |
上記を比較して、どちらの例文のほうがより相手のことを想像しやすいか考えてみてください。
短所も同時に聞かれた際は短所の改善策まで伝える
採用試験では、長所と同時に短所も聞かれるケースが少なくありません。短所を聞かれた場合は、改善策まで伝えてプラスのイメージに転じる工夫が必要です。
例えば、短所として完璧主義を取り上げたとしましょう。改善策を含めてプラスのイメージに転じる例文は、以下の通りです。
「完璧主義」という短所を伝えるとともに、「質の高い成果」「効率よく」といったプラスのイメージを与えやすいキーワードを取り入れながら、具体的な改善策を盛り込みました。単に「完璧主義」という短所を伝えた場合と比較して、好印象を抱いてもらいやすくなるでしょう。
長所の例文
【例文1:継続力】
私の強みは継続力です。大学受験時、英語の偏差値が45と低迷していましたが、毎日2時間の学習を1年間継続しました。単語帳を5周繰り返し、長文読解を毎日1題解くルーティンを欠かさず実行した結果、最終的に偏差値65まで向上させることができました。この経験で培った継続力は、御社の営業職においても必ず活かせると考えております。日々の顧客訪問や関係構築を地道に継続することで、長期的な信頼関係を築き、売上目標の達成に貢献したいと思います。目標達成まで諦めずに取り組み続ける姿勢で、御社の発展に貢献いたします。
【例文2:分析力】
私の強みは分析力です。所属するマーケティング研究会で、地域商店街の集客向上プロジェクトを担当しました。来店客数やアンケート調査のデータを詳細に分析した結果、ターゲット層と実際の顧客層にズレがあることを発見しました。この分析結果を基に新たな販促戦略を提案し、実施後3ヶ月で来店客数を20%増加させることに成功しました。御社のマーケティング部門においても、市場データや顧客動向を的確に分析し、効果的な戦略立案によって事業成長に貢献したいと考えております。論理的思考で課題を見つけ、解決策を導き出す力を活かします。

自己PRの作り方
自己PRの作り方を紹介します。
自分の強みは何かを考える
自己PRは自分の強みを伝えるためのものであることから、どのような点が強みなのかを考えるなければなりません。
長所から転じて自分の強みを探すことも、ひとつの方法です。
具体的なエピソードを加える
具体的なエピソードを加えることは、自己PRを作る際の重要な要素です。
長所の作り方でも解説しましたが、採用担当者は応募者の内面性についてはほぼわかりません。より深く理解してもらうためには、具体的なエピソードを加える方法が効果的です。
客観的な根拠を加える
客観的な根拠を加えることも、自己PRでのポイントといえます。主観的な内容だけでは、説得力が弱いからです。
具体的な客観的根拠として、数字を取り入れる方法があります。前述したエピソードに数字を取り入れることでよりリアリティが増し、説得力もプラスされるでしょう。
数字を取り入れた自己PRの例文は、以下の通りです。
「学習開始から3カ月で」を加えるだけで、継続力と粘り強さという特徴の説得力が増します。また、「集中力が高い」「未経験のことでも早く結果が出せる」といったプラスアルファの要素も加わるでしょう。
強みがどう生かせるかを伝える
具体的なエピソードを伝えた後は、強みがどう活かせるかも忘れないでください。採用担当者は、入社後のことをイメージしているからです。
強みをどのようにして活かせるかを伝える際には、企業が求める人材にもマッチングしていなければなりません。
例えば企業研究の結果、以下のような人材を企業側が求めていたとしましょう。
- プログラマー
- 困難な状況にも挫折しない
- 学習意欲がある
この場合の自己PRの例文は、以下の通りです。

長所と自己PRの作り方のコツ
長所と自己PRの作り方のコツを紹介します。
ガクチカの内容と被らない様にする
ガクチカとは、学生の頃に力を入れて積極的に取り組んだことです。
就職活動では、長所・自己PR以外にガクチカについても質問されることがあります。これらは内容が似ているため、3つのエピソードがどれも同じになってしまうことはよくあるケースです。
このようなリスクを回避するためにも、さまざまなエピソードを盛り込んで、内容が被らないように工夫しましょう。
異なる要素の長所と強みを伝える
長所と強みは、異なる要素で伝えてください。これら2つの要素がまったく同じであった場合、自己分析ができないまたは不十分と判断される可能性が高いからです。
例えば、長所で真面目な性格を取り上げたとしましょう。自己PRでは、チャレンジ精神旺盛といった異なる要素を伝えることをおすすめします。
長所も強みも、自分自身を企業に売り込むための重要なポイントです。それぞれ異なる要素を取り上げたほうが、採用担当者に自分の魅力・可能性をより正確に伝えられます。
似た要素の長所と強みを伝える
似た要素の強みと弱みを伝えることも、長所と自己PRを作成する際のコツです。
前項目で「長所と自己PRは異なる要素で作成」と解説しました。「異なる要素」と解説しておきながら、この項目では「似た要素」としている点に疑問を覚える人もいるでしょう。「似た要素」であって、「同じ要素」ではありません。
例えば、長所で前向きな点を説明したとしましょう。この長所と似たような要素として、チャレンジ精神旺盛があげられます。さまざまなことにチャレンジするためには、前向きな性格が必要不可欠だからです。
エピソードを複数個準備しておく
エピソードは、複数用意しておいたほうがよいでしょう。面接時に「ほかに活かされたと感じた経験はありますか」と質問されるケースが多いからです。
エピソードを複数個用意する際には、シチュエーションを変えることがポイントです。1つ目でアルバイトのエピソードを取り上げた場合、2つ目ではアルバイト以外のエピソードを伝えましょう。異なる状況下のエピソードを伝えることで、信憑性の裏付けになります。
例えば「責任感」という特徴を裏付けるエピソードを、シチュエーションを変えて2つ考えてみましょう。
シチュエーション | 例文 |
部活 | 私が責任感を発揮したのは、高校のバスケットボール部で副キャプテンとして務めていた時です。 ある時期、チームメンバーの遅刻・欠席が目立つようになりました。私は部員と個別に面談を行い、練習内容をより楽しいものに改善しました。 その結果、遅刻・欠席がなくなり、県大会でベスト8を達成しました。 |
アルバイト | 私の責任感の強さは、カフェでのアルバイト経験で発揮されました。 新人教育の一環として、レジ操作のミス防止という業務指導を任されました。私は新人育成の責任者として、アルバイト店員が自信をもって業務に取り組めるようになるまでつきっきりで操作方法を教え、具体的な改善点のフィードバックも行いました。 結果、短い育成期間で1人でレジ操作ができるようになり、ミスもなくなりました。 |

長所と自己PRの作り方の注意点
長所と自己PRの作り方の注意点を解説します。
結論を先に述べる
長所や自己PRは、結論から先に伝えましょう。そのほうが、企業に重要なポイントを理解してもらいやすいからです。
例えば先に具体的なエピソードを伝えてしまうと、企業側は何を伝えようとしているのかわかりません。
先に結論から伝えておくと、そのあとに続く具体的なエピソードや業務への活かし方といった内容は、結論で伝えた内容を前提に聞いてもらえます。よりリアルなイメージもしてもらえるでしょう。
企業の求める人物像、社風とかけ離れない
企業の求める人物像や社風と、かけ離れないように注意してください。採用する側は、入社後を想定して採用試験を行っているからです。
そのためには、徹底した企業研究が欠かせません。社風とともにどのような人物像を求めているのか調べておきましょう。
長所と短所には一貫性を持たせる
長所と短所には、一貫性を持たせることも注意点のひとつです。
例えば、長所でコミュニケーション能力が高い点を伝えたとしましょう。その一方で短所で人見知りについて取り上げてしまうと、採用担当者側は混乱します。
これら2つは一貫性を持たせるようにしましょう。
バレる嘘はつかない
バレる嘘をついてはいけません。
エピソードを伝える際、インパクトを出すために話を盛りたいと思うことはあるでしょう。このように感じることは誰にでもあり、多少なら問題ないケースもあります。
少し話を盛る程度ならまだしも、嘘はつかないようにしましょう。

効率よく長所、自己PRを作る方法
効率よく長所・自己PRを作る方法を、メリット・デメリットともに紹介します。
家族・友人に相談する
メリット | デメリット |
・客観的な視点が得られる ・具体的なエピソードも引き出せる ・表現の幅が広がる ・安心と自信につながる |
・評価が甘くなりがち ・主観的な意見に偏る可能性が高い ・就職活動という専門的な視点からのアドバイスは期待できない |
家族・友人は自分の長所・短所をよく知っているため、自己分析を深める際に有効な手段です。
キャリア支援のサービスを利用する
メリット | デメリット |
・専門的な視点から客観的なアドバイスが受けられる ・効果的な構成・表現方法の指導をしてもらえる ・模擬面接などの実践的な練習ができる ・企業が求める人物像とのマッチング率が高くなる ・情報収集の手間が省ける |
・担当者との相性が合わない可能性がある ・サービス利用時間が定められている場合あり ・作られた自己PRになるリスクが高い ・サービスに依存してしまうケースあり ・エージェントの場合は企業に偏りあり |
キャリア支援サービスは、就職活動の大きな助けになるでしょう。
ツールを利用する
メリット | デメリット |
・短時間で作成できる ・自己分析のきっかけになる ・表現の幅を広げられる ・好きな時間に利用できる |
・オリジナリティにかける可能性が高い ・具体的なエピソードの深掘りが不足する ・誤解を招く表現になる可能性がある ・有料サービスや広告が多い |
生成AIをはじめとするツールは、たたき台として利用価値が高いといえます。

よくある質問
よくある質問とその回答を紹介します。
ESと面接で同じエピソードを話してもいい?
問題ありません。
ただし丸暗記はやめたほうがよいでしょう。丸暗記をしてしまうと、「表現力が乏しい」「自己分析が不足している」と判断されかねません。面接でESと同じエピソードをする場合は、情報を付け足すなどの工夫をすることをおすすめします。
長所と自己PRは使いまわしても大丈夫?
長所と自己PRはたとえ同じ業界・職種であっても、使いまわしはおすすめしません。企業によって求める人物像が異なるからです。
たとえ業界・職種がまったく同じの2社に応募したとしても、募集している人物像は細かな点で異なっていることが一般的です。
使いまわしてしまうと企業が求める人物像にミスマッチしてしまい、採用のチャンスを逃しかねません。長所と自己PRは、企業研究を徹底的に行ったうえで個別に作成しましょう。
エピソードが弱くても大丈夫?
エピソードが弱くても問題ありません。企業はエピソードのインパクトよりも、マッチング度を重視しているからです。
エピソードのインパクトを強めようとして事実を盛ると、嘘くさいといった印象を与えてしまう可能性があります。エピソードのインパクトよりも、企業研究を徹底的に行うとともに自己分析を深掘りして、マッチング度を高めましょう。
長所と自己PRで内容が似ていても大丈夫?
長所と自己PRは内容が似ていても大丈夫です。
ただし長所と自己PRは、企業側の視点が根本的に異なります。長所ではその人の性格・特徴を見ていますが、自己PRは入社後を想定した判断材料です。自己PRは自分を売り込むための重要な情報なので、長所以上に明確にイメージできる具体的なエピソードを加えましょう。

まとめ
長所と自己PRについて解説しました。
長所と自己PRはニュアンスが似ているため、同じと思っている人も少なくありません。しかし企業側は長所でその人の特徴・性格などを確認し、自己PRで採用後をイメージしています。このように視点がまったく異なるので混同しないようにしましょう。
本記事で紹介した作り方・コツなどを参考にして、効果的な長所・自己PRを作成してください。
