
就職活動において、面談は企業との相互理解を深める重要な機会です。面接とは異なり、よりリラックスした雰囲気で企業の実情を知ることができる貴重な場となっています。しかし、準備不足では十分な効果を得られません。
本記事では、新卒の面談で準備すべき事項から当日のコツ、適切な心構えまでを詳しく解説します。面談を成功させ、志望企業への理解を深めるための実践的なノウハウをお伝えしていきます。
そもそも面談とは
新卒採用プロセスにおいて、面談は企業と学生が相互理解を深める重要な機会です。面接とは異なる性質を持つ面談について、その本質的な意味や企業側の狙いを正しく理解することが成功への第一歩となります。
面接との違い
面接と面談は表面的には似ていますが、根本的な目的が異なります。面接は明確な選考プロセスであり、合否判定が行われる評価の場です。一方で面談は、基本的に合否判定を目的としていません。
面談の最大のメリットは、リラックスした環境で率直な質問ができることです。選考への直接的な影響を過度に心配せず、企業について知りたいことを積極的に質問できる貴重な機会となります。
企業が面談を行う目的
企業が面談を行う目的は以下の通りです。
仕事内容や社風を理解してもらうため
企業と学生のマッチング精度を高めるため、企業は面談を通じて職場の雰囲気や企業文化を伝えようとします。企業文化とは、その組織特有の価値観や行動様式を指します。
どれほど優秀な学生であっても、企業文化とのミスマッチがあれば働きづらさを感じてしまいます。面談では堅苦しくない雰囲気の中で、社員の本音や実際の働き方について聞くことができます。
説明会や面接では表面的な情報しか得られませんが、面談では企業のリアルな姿を知ることが可能です。このような情報は、入社後のギャップを防ぐために非常に重要な要素となります。
応募者の志望度を上げるため
面談は企業の魅力を直接的にアピールし、学生の志望度を高める効果的な手段でもあります。特に知名度が低い企業や人材確保に課題を抱える企業にとって、面談は重要な採用戦略の一つです。
単純な説明会やインターンシップだけでは伝えきれない企業の魅力を、面談という個別対応の場で丁寧に説明できます。また、接触回数が増えることで学生に親近感を持ってもらい、自然な形で志望度の向上を図れます。


面談で話す内容
面談では企業の業務内容、強み、職場の雰囲気など、入社後のミスマッチを防ぐための詳細な情報交換が行われます。学生からの質問についても、「何でも気軽に聞いてください」という姿勢で幅広く受け付けるのが一般的です。
場合によっては「自己PRをお願いします」「志望動機を教えてください」といった選考的な質問をされることもあります。このような質問を通じて、面接対策に必要な改善点についてフィードバックを受けることも可能です。
面談の種類
面談には複数の形態があり、それぞれ異なる目的と特徴を持っています。各形態の特性を理解することで、適切な準備と対応が可能になります。
リクルーター面談
リクルーター面談は、採用活動をサポートする専任社員が学生と行う面談です。リクルーターには、学生と同じ大学出身者や年齢の近い20~30代の若手社員が選ばれることが多いです。
学生は年齢の近い先輩社員から、就職活動に関する実践的なアドバイスを受けられます。また、企業の内部事情についても率直な話を聞くことができるでしょう。選考開始の数ヶ月前から始まり、同じリクルーターと複数回の面談を重ねるケースもあります。
自己分析の相談や就職活動全般のサポートを提供してくれるリクルーターも存在します。
リクルーター面談は純粋な学生支援だけでなく、企業の採用戦略の一環として実施されています。優秀な人材に自社の魅力を知ってもらい、志望度を高めてもらうことが主要な目的となっています。
カジュアル面談
カジュアル面談は、会議室やカフェなどで人事担当者や現場社員とフランクに話し合う形式です。企業から指定された日時に参加したり、説明会の流れで誘われたりするケースがあります。
選考開始前の段階で実施されることが多く、企業は学生に情報を提供して興味を持ってもらうことを目指しています。通常は事業内容や現場の様子について説明があり、その後に質疑応答やディスカッションが行われます。
自然体で自分の考えをアピールしたり、企業への疑問を率直に質問したりできる貴重な機会です。社員と直接対話することで、職場の雰囲気や社員の人柄など、定量的には測れない企業の特徴を理解できます。
内定者面談
内定通知後に実施される内定者面談では、主に条件面の確認や配属に関する相談が行われます。希望部署の聞き取りや入社後の流れについて詳細な説明を受けることが一般的です。
電話・WEB面談
従来の対面面談と同様の内容を、電話やWeb会議システムを使って実施する形態も増えています。感染症対策の観点から導入する企業が多く、今後も継続される可能性が高いです。
特に電話面談は対面よりも気軽な雰囲気でコミュニケーションが取れるため、聞きたいことをリラックスして質問できる傾向があります。技術的な準備も含めて、オンライン面談特有の注意点を把握しておくことが重要です。
新卒のカジュアル面談は要注意!?
カジュアル面談は名前の通りカジュアルな雰囲気で行われますが、新卒採用においては特別な注意が必要です。企業の真の目的を理解し、適切な準備と対応を心がけることが成功の鍵となります。
企業がカジュアル面談を行う目的
企業がカジュアル面談を行う目的は以下の通りです。
①優秀な学生と早期に接点を持つため
最も一般的な目的は、優秀な学生や自社にマッチする可能性の高い学生との早期に接点を持つことです。特に大手企業や人気企業では、全志望者にカジュアル面談を提供する余裕がないため、選抜した学生のみに機会を提供します。
②内定辞退を避けるため
人事担当者が最も避けたい事態は、内定辞退や早期退職です。これらを防ぐためには学生の志望度向上と、入社後のミスマッチ防止が不可欠です。
カジュアル面談を通じて企業のリアルな姿を伝えることで、学生により深い理解を促します。表面的な情報だけでなく、実際の働き方や職場の雰囲気を知ってもらうことで、入社への納得度を高める狙いがあります。
③自社の解像度を上げてもらいたい
社員の本音や具体的な働き方、仕事のやりがいなどを直接伝えることで、学生の企業理解を深める目的もあります。
カジュアル面談を行うときの注意点
カジュアル面談を行うときの注意点は以下の通りです。
①気を抜きすぎないこと
「選ばれるための準備の場」でもあることを忘れず、適度な緊張感を保ちながら望むことが重要です。自然体でありながらも、社会人としての基本的な振る舞いを心がけましょう。
②企業研究をしっかり行ってから望む
カジュアル面談では、学生の企業に対する期待や就職活動の軸について質問される可能性が高いです。そのため、面談前に企業の事業内容や職種について基本的な理解を深めておく必要があります。
「とりあえず参加して情報をもらおう」という受け身の姿勢では、企業側に良い印象を与えられません。事前調査を行い、具体的な質問や意見交換ができる準備を整えておきましょう。


面談に参加することのメリット
面談への参加は、就職活動を有利に進めるための多くのメリットをもたらします。これらの利点を最大限活用することで、志望企業への理解を深め、選考での成功確率を高めることができます。
①面接よりも気軽に質問できる
面接でも質問の時間は設けられますが、選考の場であるため率直な質問をしにくい雰囲気があります。また、自分のアピールにつながる質問を意識してしまい、本当に知りたいことを聞けないケースも多いです。
面談であれば選考への直接的な影響を気にすることなく、気軽に疑問を投げかけることができます。入社判断に必要な情報を、納得がいくまで収集することが可能です。
避けるべき質問の種類 | 具体例 |
プライベートに関する質問 | 社員の恋愛事情、家族構成など |
企業の悪評やゴシップ | ネット上の悪い評判の真偽など |
福利厚生や給与のみの質問 | 年収や休日数だけに特化した質問 |
礼儀を保ちながら、企業理解に必要な情報を積極的に収集することが重要です。
②入社後のミスマッチを防げる
どれほど能力が高くても、企業独自の雰囲気や社員の価値観と合わなければ、入社後に働きづらさを感じてしまいます。面談を通じて率直な対話を行い、職場の実際の雰囲気を知ることで、こうしたミスマッチを事前に防げます。
企業文化との適合性を確認するための質問例は以下の通りです。
- 社員の方々が大切にしている価値観は何ですか
- チームワークを重視する場面と個人の裁量を尊重する場面の使い分けはどうなっていますか
- 困難な状況に直面した時、社員の皆さんはどのように乗り越えていますか
これらの質問を通じて企業文化に魅力を感じた場合、選考では企業文化への共感を志望動機として活用することもできます。
③社員に顔を覚えてもらえる
面談参加により企業との接触回数が増加し、社員に顔を覚えてもらいやすくなります。この結果、熱意が伝わりやすくなり、選考において有利に働く可能性があります。
さらに、社員とのコネクションが形成されることで、一般公開されていないインターンシップやセミナーの案内を受けられることもあります。このような特別な機会への参加は、企業理解をさらに深める貴重なチャンスとなります。
面談に向けた準備
面談の成功は事前準備の質によって大きく左右されます。適切な準備を行うことで、限られた時間を最大限活用し、企業との有意義な対話を実現できます。
希望する会社の基本情報を調べる
多くの就職活動生が見落としがちですが、面談前の企業調査は極めて重要です。面接前には調査する人が多いものの、面談前は「直接聞けばよい」という姿勢になりがちです。
「事前に調べてこのように理解しましたが、実際の状況はいかがでしょうか」といった踏み込んだ質問ができるのです。
面談では受け身的な姿勢で参加する学生も少なくないため、積極的な事前調査の姿勢を示すことで自然と高い評価につながります。すべての企業を詳細に調査することが困難な場合は、志望度の高い企業に絞って集中的に準備することをお勧めします。
想定される質問を考えておく
カジュアル面談やリクルーター面談で企業から聞かれる質問は、1次面接の内容と大きくは変わりません。主に以下のような基本的な質問について準備しておきましょう。
- 企業選択の軸
- 大学生活で力を入れたこと
- 将来のキャリアビジョン
- 志望動機
- 自己PR
選考とは直接関係しない面談であっても、志望度の高い企業であれば志望動機や自己PRを明確に答えられるよう準備しておくことが重要です。完璧でなくても構いませんが、現時点での考えや迷っている点を相手にきちんと伝えられるようにしておきましょう。
想定される質問集
【面接で想定される質問20選】① 自己紹介・志望動機編
- 簡単に自己紹介をしてください。
- 当社を志望した理由は何ですか?
- この業界を選んだ理由を教えてください。
- あなたの強みと弱みを教えてください。
- 他社ではなく、なぜ当社なのですか?
② 経歴・スキル・実績編
- これまでの経歴・職歴を教えてください。(※中途の場合)
- 大学時代に力を入れたことは何ですか?(※新卒向け)
- これまでに直面した困難と、それをどう乗り越えたか教えてください。
- チームで取り組んだ経験について教えてください。
- 今までの経験を当社でどう活かせると思いますか?
③ 人物・価値観編
- あなたが大切にしている価値観は何ですか?
- 周囲からどのような人だと言われますか?
- 尊敬する人物とその理由を教えてください。
- これまでに失敗した経験と、その学びは?
- 5年後、10年後にどうなっていたいですか?
④ 働き方・志向編
- どんな働き方をしたいと考えていますか?
- 残業や出張についてどう思いますか?
- リーダータイプですか?サポートタイプですか?
- 転勤の可能性がありますが、問題はありますか?
- 最後に何か質問はありますか?
面談で聞くべき内容を見つけメモしておく
企業情報をノートにまとめる過程で、理解が曖昧な部分や具体的にイメージしにくい箇所が見つかるはずです。これらの疑問点を解消するための質問を事前に準備しておきましょう。


当日のイメージをつかもう! 実際の面談の流れ
面談の実際の進行を理解しておくことで、当日落ち着いて対応することができます。一般的な面談の流れを把握し、各段階での適切な振る舞いを心がけましょう。
①アイスブレイク
面談の開始時には、お互いの緊張をほぐすためのアイスブレイクが行われることが多いです。これはビジネスシーンでも一般的に行われるコミュニケーション手法です。
「今日は暖かいですね」「こちらまでは電車でいらっしゃいましたか」「今日は授業がありましたか」といった簡単な質問をされます。これらには簡潔に答えれば十分で、自然体で会話のキャッチボールを心がけましょう。
②自己紹介
アイスブレイク後は、企業の担当者と学生の相互自己紹介が行われます。流れによっては面談の説明や企業説明が先に来る場合もありますが、企業側が進行を誘導してくれるので安心してください。
③面談の流れの説明
相互自己紹介の後、企業担当者から面談の進め方について説明があります。「まず弊社の事業内容をご説明し、その後自由な質疑応答の時間とします。全体で約1時間を予定しています」といった具体的な流れが示されます。
この説明をしっかりと聞き、全体の時間配分を把握しておくことで、質問のタイミングや内容を適切に調整できます。
④企業の事業説明
企業は学生に情報を提供して興味を持ってもらいたいと考えているため、詳細な事業説明が行われることが多いです。ホームページや公開情報では得られない貴重な情報を教えてもらえる機会なので、真剣に聞きましょう。
説明中に不明な点があれば、積極的に質問して疑問を解消することが重要です。質問することで「興味を持ってくれている」という印象を与えられ、会話も弾みやすくなります。
⑤質疑応答
企業説明後は自由な質疑応答時間となります。企業担当者から質問された場合は、評価される可能性を念頭に置いて気を抜かずに答えましょう。逆質問の機会では、事前に準備した質問や事業説明で生じた疑問を聞いてください。相手の所属部署や立場を考慮した質問内容にすることで、より有意義な情報を得られます。
例えば、人事担当者なら全般的な質問に対応できますが、営業担当者なら営業現場の詳細について特に詳しく教えてもらえます。役員クラスの方であれば、会社全体の方針や成長戦略について深い話を聞けるでしょう。
面談当日に意識するポイント
面談当日の振る舞いは、企業側の印象に大きな影響を与えます。以下のポイントを意識することで、プロフェッショナルな姿勢を示し、良好な関係を築くことができます。
①エントリーシートの内容と一貫させる
例えば、エントリーシートで「長期インターンで営業を担当し、売上を20%向上させました」と書いたにもかかわらず、面談では「営業成果は出せませんでしたが、社会人スキルを学べました」と答えては一貫性がありません。
事前に自分がエントリーシートで記載した内容を必ず確認し、面談での発言との整合性を保つよう注意しましょう。
②笑顔で挑む
初めの挨拶や帰り際には、自然な笑顔で対応することを心がけましょう。緊張していても、相手への敬意と感謝の気持ちを笑顔で表現することで、好印象を与えることができます。
無理に作った笑顔ではなく、相手との対話を楽しむ気持ちから生まれる自然な表情を意識することが大切です。
③結論ファースト
特にコンサルティング業界や営業職を志望する学生は、結論ファーストでの回答を心がけましょう。最初に結論を述べてから詳細を説明する話し方は、ビジネスシーンでの基本的なコミュニケーション技術です。
この話し方を実践することで、論理的思考力とコミュニケーション能力の高さをアピールできます。面談という比較的リラックスした場でも、このような基本的なビジネススキルを意識することが重要です。


まとめ
新卒採用における面談は、企業と学生が相互理解を深める貴重な機会です。面接とは異なるカジュアルな雰囲気の中で、率直な対話を通じて企業の実態を知り、自分との適合性を確認できます。
成功の鍵は、適切な事前準備と当日の振る舞いにあります。企業研究を怠らず、想定質問への準備を行い、自然体でありながらもプロフェッショナルな姿勢を保つことが重要です。面談を単なる情報収集の場としてではなく、企業との関係構築の出発点として活用することで、就職活動全体の成功確率を大幅に向上させることができるでしょう。