
新卒の就職先として人気が高い職種のひとつが「事務職」です。そのなかでも、企業の中核を担う「総合職」は注目を集めています。
しかしその一方で、「総合職とはそもそもどういう仕事なのかわからない」「一般職との違いは何だろう」といった疑問・不安を抱えている人も少なくありません。似たような名称の職業が多いため、混乱する人もいるでしょう。
本記事では、総合職全般について解説します。具体的な仕事内容・一般職との違い・総合職に向いている新卒の特徴なども含めて網羅的に紹介するので、ぜひ参考にしてください。
総合職って何するの?
新卒のなかには、総合職を希望する人が少なくありません。しかし総合職とはどういう仕事をするのか、詳しく知っている人はあまり多くないでしょう。
総合職の種類・将来性なども含めて確認していきましょう。
総合職とは
総合職は、企業の中核を担う職種です。部署異動を繰り返しながら幅広い業務を経験して多様なスキルと知識を習得するため、特定の専門分野に限定されません。
さまざまな部署で経験を積むことで企業の全体像を深く理解し、多角的な視点から物事を捉える能力を養います。様々な部署で経験を積むことを通して、将来的に責任あるポジションでリーダーシップを発揮することが期待されます。
業務内容は多岐にわたり、高い課題解決能力と変化への適応力が求められます。また組織内の多様な人々と連携し、プロジェクトを推進するコミュニケーション能力も不可欠です。
総合職の種類
総合職の種類について紹介します。
事務系総合職
事務系総合職は、文系出身者が多く活躍する職種です。企業の多岐にわたる業務を経験しながら、将来の幹部候補を目指します。深く関わりながら担当する具体的な分野は、主に以下の通りです。
分野 | 例 |
管理部門 | 人事、総務、経理など |
経営戦略・事業推進 | 営業、企画、マーケティングなど |
部署異動を繰り返すことで幅広い視野と実践的なビジネススキルを養い、複雑な課題を解決する能力を磨きます。事務系総合職は、企業全体の円滑な組織運営を支える重要な部署です。
文系的な素養である論理的思考力・コミュニケーション能力・文章力などが活かせます。
技術系総合職
技術系総合職は、理系出身者がその専門知識と論理的思考力を活かして活躍する職種です。企業のなかでも、ものづくりの根幹を支える幅広い部門で経験を積みます。モノづくりの根幹を支える部門の具体例は、以下の通りです。
- 研究
- 開発
- 設計
- 生産技術
- 品質管理
技術系といっても、単に特定の技術を追求するだけではありません。技術的な視点から事業全体の課題を抽出し、解決策を企画・実行する役割を担います。
部署異動を通じて多角的な視点とマネジメント能力を養い、企業の技術戦略をリードするスキルが求められます。常に変化する技術動向に対応し、新しい価値を創造していく探究心と応用力が求められます。
総合職は将来、管理職や幹部になれる!
総合職は、企業の将来を担う管理職や幹部候補生として採用される職種です。特定の専門分野に限定されず、さまざまな部署でのジョブローテーションを通じて幅広い業務経験を積みます。
多様な経験を通じて企業の全体像を深く理解し、多角的な視点から課題を捉えて解決する能力を養うことが目的です。将来的に配属される立場として、以下のようなものがあげられるでしょう。
- 主任、リーダーなどの役職
- 課長、マネージャーなどの管理職
- 部長、事業部長などの上級管理職
- 役員(執行役員、取締役など)
組織を牽引していくための実践的な知識とリーダーシップを身につけることが強く期待されています。

一般職とは?
総合職と混同されやすい一般職について、確認していきましょう。
一般職の仕事内容
一般職は、企業の円滑な運営を支える重要な役割を担う職種です。主に総合職が本業に集中できるよう、事務的なサポートを行うことがその中心的な仕事内容となります。
具体的な業務内容の例は、以下の通りです。
- 書類作成やデータ入力
- 電話対応
- 来客応対
- 資料準備
基本的に定型かつ補助的な業務を、正確かつ迅速に処理することが求められます。特定の部署で定型業務に精通しながら、組織の「縁の下の力持ち」として貢献する職種といえるでしょう。
一般職(事務職)の種類
一般職(事務職)の種類と主な仕事内容を紹介します。
一般事務
一般事務は、オフィスワーク全般をサポートする職種です。主な仕事内容として、以下のようなものがあげられます。
仕事内容 | 例 |
定型的な事務処理 | 書類作成、データ入力、ファイリングなど |
突発的な事務処理 | 電話対応、メール対応、来客対応、郵便物の仕分けおよび発送、備品管理など |
一般事務は配属される部署の事務的な仕事を一手に引き受ける立場にあることから、その業務内容は多岐にわたります。
部署内の業務が円滑に進むよう、他の社員のサポートを行う「縁の下の力持ち」的な役割を担います。正確性と効率性が求められるほか、社内外の人との円滑なコミュニケーション能力も重要です。企業や部署によって担当する業務範囲は異なりますが、一般的にルーティンワークが多い傾向にあります。
人事事務
人事事務は、企業の「人」に関わる多様な業務をサポートする職種です。主な仕事内容として、以下のようなものがあげられるでしょう。
- 社員の入社および退社手続き
- 社会保険関連の手続き
- 給与計算の補助
- 勤怠管理
- 福利厚生に関する案内
社員が安心して働ける環境を整えるため、正確性と機密保持が特に求められます。また社員からの問い合わせ対応や、人事制度に関する資料作成なども行うこともあります。
人事事務は、円滑な組織運営に貢献する重要な役割を担います。
経理事務
経理事務は、企業の「お金」の流れを管理・記録する専門職です。主な仕事内容として、以下のようなものがあげられます。
- 日々発生する売上や仕入
- 経費などの伝票処理
- 会計ソフトへの入力
- 現金・預金の管理
- 経費精算
- 請求書の発行
上記は日常的な業務の内容ですが、経理事務が担当するのはこれだけではありません。月次および年次では日常業務に加えて、以下のような仕事も加わります。
- 売掛金・買掛金の管理
- 月次決算・年次決算の補助
- 税務申告に必要な資料作成
経理事務は企業の経営状況を数字で正確に把握し、経営判断の基礎となる情報を提供する重要な職種です。正確性と細やかな注意力、そして簿記などの会計知識が求められます。
営業事務
営業事務は、営業担当者を事務的な側面からサポートするとともに営業活動が円滑に進むよう支援する職種です。主な仕事内容として、以下のようなものがあげられます。
- 見積書や契約書の作成
- 受発注処理
- 納期の確認・調整
- 顧客データの管理
- 電話・メールでの問い合わせ対応
営業担当者が顧客への提案や商談に集中できるよう、きめ細やかなサポートを提供しなければなりません。正確性とスピードが重要になるほか、社内外の人々と円滑なコミュニケーションを図る能力も不可欠です。営業成績に間接的に貢献する、やりがいのある仕事といえるでしょう。
貿易事務
貿易事務は、商品の輸出入に関わる事務手続き全般を担う専門職です。主な仕事内容として、以下のようなものがあげられます。
- 海外の取引先との連絡調整
- 船積書類や通関書類の作成
- 貨物の手配
- 納期管理
- 代金決済関連の処理
国際的な取引をスムーズに進めるため、各国の法律・商習慣・輸送方法に関する知識が必要不可欠です。また、外国語でのコミュニケーション能力も求められます。
正確性と緻密な作業が求められる一方で、世界と日本をつなぐ重要な役割を担う職種といえるでしょう。
秘書
秘書は、多忙な上司や役員が自身の業務に集中できるように幅広いサポートを行う職種です。主な仕事内容として、以下のようなものがあげられます。
- スケジュール管理
- 出張手配、資料作成
- 来客応対
- 電話・メール対応
- 会議の準備
業務で必要になるのは、上司の指示を正確に理解する能力だけではありません。先回りして行動する先見性や、高い倫理性も求められます。また、社内外の関係者との円滑なコミュニケーションを調整する能力も不可欠です。
上司の業務効率を高め、組織全体の生産性向上に貢献する重要な役割を担います。
一般職に向いている人
以下のような特徴がある人は、一般職に向いているといえるでしょう。
- 裏方業務が好きな人
- 転勤や異動を望まない人
- 正確かつ丁寧に仕事ができる人
- 責任感がある人
- コミュニケーション能力がある人
- 協調性がある人
- 学習意欲がある人
そのため上記のような特徴がある人が、一般職向きであるといえます。

総合職と一般職の違い
総合職と一般職の違いを、多方面から検証していきましょう。
給与や待遇
総合職と一般職では、給与や待遇面に明確な違いがあります。
総合職 | 一般職 | |
基本給 | 高め | 低め |
昇給や昇進のスピード | 速い | 機会が限定的 |
福利厚生面 | 手厚い制度が適用されるケースが多め | 限定的 |
転勤や異動 | 多い | 少なめ |
総合職は将来の管理・幹部候補生であるため、基本給や待遇面は優遇されているといえるでしょう。
一方の一般職は、総合職のサポートがメイン業務です。そのため、基本給や待遇面は総合職と比較すると優遇されているとはいえないケースが多く見られます。しかし転勤・異動があまりない点は、メリットといえるでしょう。
昇進制度
昇進制度も、総合職と一般職の相違点です。
総合職は将来の幹部候補生として採用されるため、総合職は昇進のスピードが速く、より上位の役職を目指せる昇進パスが用意されています。さまざまな部署を経験しながら、多様なスキルを習得しなければなりません。早期にリーダーシップを発揮する機会が与えられ、成果に応じて昇給・昇格していきます。
一方、一般職は主に総合職のサポート業務が中心です。そのため、昇進の機会は総合職に比べて限定的といわざるを得ません。役職が上がったとしても、主任やリーダーといった比較的限定的な範囲に留まることが多いでしょう。昇給に関しても、年功序列や経験年数に基づくものが一般的です。
業務内容
総合職は、企業の将来を担う中核人材としての立場にあります。そのため、企画、営業、開発、人事など多岐にわたる基幹業務を担当することが仕事です。ジョブローテーションによりさまざまな部署を経験して幅広い知識とスキルを習得しながら、将来の管理職や幹部を目指します
一般職は、総合職の業務を事務的にサポートすることが主な役割です。主な業務内容として、以下のようなものがあげられます。
- データ入力
- 書類作成
- 電話応対
- 経費処理など
上記に定型的な業務を中心に担当し、特定の部署で専門性を深めることが多いでしょう。転勤や部署異動は比較的少なく、ワークライフバランスを重視しやすい傾向があります。
転勤や異動
総合職は将来の管理職・幹部候補として企業の全体像を把握するため、部署異動や転勤が多いことが特徴です。全国各地あるいは海外の支社・支店へ転勤する可能性が高く、多様な環境で経験を積むことが期待されます。
一般職は主に特定の部署で事務的なサポート業務を行うため、転勤や異動は基本的に少なめです。転居を伴う異動は、原則としてありません。地域限定で働くことが多いため、安定した環境でワークライフバランスを重視したい人に向いています。
研修制度
研修制度も、総合職と一般職の相違点としてあげられるでしょう。内容と目的が異なるからです。
目的 | 具体例 | |
総合職 | 管理職・候補職としての幅広いスキルと知識の習得 | リーダーシップ、マネジメント、戦略立案など |
一般職 | 担当する事務業務を正確かつ効率的に遂行するための実務スキルやビジネスマナー | PCスキル、電話対応、文書作成など |
総合職向けの研修は、より高度な内容が盛り込まれています。異動や昇進の節目にも、その役割に応じた専門的な研修が用意されることが多いです。
一般職向けの研修は、日々の業務に必要な基礎的な内容が中心となります。
選考方法
総合職の選考は、将来の幹部候補を採用することが目的のため、論理的思考力や問題解決能力、リーダーシップ、主体性などを多角的に評価します。面接回数が多かったり、グループディスカッションといった実践的な試験が課されたりするでしょう。選考スケジュールも一般職より先行して行われる傾向が高めです。
一般職の選考は、正確性・丁寧さなど事務処理能力やサポート業務への適性を重視します。筆記試験や一般的な面接が中心となり、総合職に比べて選考プロセスが簡素な場合が多めです。
男女比
一般的に総合職は、男性の割合が高い傾向にありました。将来の管理職や幹部候補として、全国転勤や幅広い業務を経験することが前提となるためです。
一般職は女性の割合が圧倒的に高い傾向にあります。一般職は定型業務が中心であり、転勤は総合職ほど多くはありません。結婚や出産といったライフイベントと仕事の両立をしやすいという理由で、女性に選ばれることが多かったためです。

近年は一般職の募集が減少している
近年、一般職の募集が減少傾向です。その理由として、以下のような点があげられます。
- IT技術の進化やDX推進
- 定型的な事務業務のシステム化および効率化
- 業務量の減少
今後はより付加価値の高い業務へのシフトや、専門性の高いスキルを持つ人材が求められる傾向が強まるでしょう。
総合職の動向
総合職の動向について、確認していきます。
スキルアップや昇給の可能性が高い
総合職は多様な業務経験を通じて、問題解決能力やリーダーシップといった汎用スキルの効率的な習得が可能です。また昇給の機会も多いため、着実なスキルアップと報酬向上が期待できます。
総合職の採用が活発になっている
近年、企業では将来の幹部候補となる総合職の採用が活発化しています。グローバル化やDX推進など変化の激しいビジネス環境において、多様な課題に対応できる人材を求める企業が増えているためです。
一方で、RPAなどの技術導入により一般職が担う定型業務の多くが効率化され、業務量が減少しています。そのため一般職の採用は縮小傾向にあり、将来的には総合職に一本化される企業も増えていくでしょう。
総合職に向いている人
総合職に向いている人を紹介します。
チャレンジ精神を持っている人
チャレンジ精神を持っている人は、総合職に向いているでしょう。業務上、未経験の業務や困難な課題に積極的に挑まなければならないからです。
またジョブローテーションで多様な経験を積むため、常に新しい知識やスキルを習得して変化に適応する意欲が求められます。
高収入を目指したい人
高収入を目指したい人は、総合職がおすすめです。
総合職は企業の基幹業務を担うとともに、将来の管理職や経営幹部を目指すポジションです。そのため、一般職に比べて基本給が高く設定されています。
成果に応じて昇給・昇進の機会も多く、長期的に見て高収入を得やすい職種です。責任ある立場と貢献度に見合った報酬が期待できます。
自己管理能力に長けている人
総合職は多岐にわたる業務を効率的にこなすため、自己管理能力が不可欠です。
複数のプロジェクトを並行して進めたり、急な業務にも対応したりしなければなりません。スムーズに業務を進行させるためには、スケジュール管理や優先順位付け、体調管理など、自律的に行動する能力が求められます。

総合職と一般職で迷ったら
総合職と一般職で迷った場合の選択方法について紹介するので、参考にしてください。
企業ごとの職種による違いを分析する
総合職と一般職の選択で迷う際は、各企業の職種定義を深く分析することが重要です。
一般論として、総合職は転勤や幅広い業務を伴います。
例えば、地域限定の「エリア総合職」や専門性特化型の「総合職」も存在します。
給与、キャリアパス、異動、研修制度など、多角的に企業ごとの違いを認識し、自身の希望に合致するか見極めることが、後悔しない選択につながるでしょう。
将来のキャリアプランを考える
総合職と一般職の選択で迷った場合、将来のキャリアプランを具体的に考えてみてください。
総合職は多様な経験と昇進機会がある一方、転勤や残業が多い傾向です。一般職は定型業務で安定した働き方ができますが、昇進は限定的といわざるを得ません。

総合職につくために学生時代にやるべきこと
総合職に就くために学生時代にやるべきことを紹介します。
実務型インターンシップへの参加
総合職を目指す上で、実務型インターンシップへの参加は非常に有効です。実際の企業で社員の一員として業務に携わることで、業界や職種の理解を深められます。
仕事のリアルな面白さ・厳しさや自身の適性を見極める貴重な機会は、単なる説明会では得られません。また、ビジネスマナーやコミュニケーション能力といった実践的なスキルを習得できます。
論理的思考力の習得
総合職には、複雑な課題を分析して最適な解決策を導き出す論理的思考力が不可欠です。学生時代には、この能力を意識的に鍛えるべきでしょう。
日常生活の中でも「なぜそうなったのか」「どうすれば改善できるか」と問いを立てる癖をつけることで、実践的な論理的思考力を高められます。これは就職活動だけでなく、将来のキャリア形成においても強力な武器となるでしょう。
自己分析とキャリアビジョンの明確化
総合職を目指すなら、学生時代に自己分析とキャリアビジョンの明確化を徹底してください。
自分が何に興味があり、どんな強みを持っているのか、将来どのような働き方をしたいのかを深く掘り下げましょう。徹底した自己分析を行うことで企業選びの軸が定まり、説得力のある志望動機を形成できます。
また入社後のミスマッチを防ぐとともに、長期的なキャリア形成を見据えた選択が可能です。
まとめ
新卒向けの総合職について解説しました。
総合職と一般職は混同されがちですが、将来的に目指すものなどに大きな違いがあります。一般的に総合職のほうが、汎用性およびレベルの高いスキル・知識が求められます。
本記事で紹介した種類・仕事内容・動向・向いている人などを参考にして、新卒での総合職を目指してください。
